2015/07/07

新国立競技場 

本日(2015年7月7日)に、第6回国立競技場将来構想有識者会議がありました。

新国立競技場の総工費2520億円とした計画見直し案が報告されて、了承されたとのことです。維持費など改修費が完成後50年間で1046億円かかるとされ、従前より400億円ほどアップしているのも驚きです。

安藤忠雄氏が欠席したことが話題になっていますが、もうデザインの問題でもないので、出席しても時間の無駄なんでしょう。

公表されている日本スポーツ振興センター(JSC)の財務データを見る限り、現時点で、そんな資金はなさそうですが、JSCは、独立行政法人日本スポーツ振興センター法や独立行政法人通則法が適用される独立行政法人でして、独立採算でもなく運営費交付金や施設整備費補助金など、政府から援助を受けている組織ですから、なんとか税金から調達するのでしょう。

ネーミングライツを売るとか報道されていますが、なかなか厳しい印象を受けます。
年間収支は3800万円の黒字とか言っていますが、それはさすがに嘘だろう、ってみんな思ってます。意思決定に関与した方はどうせ責任をとりませんから、国民がそのつけを払わさせられるのは確実です。

なお、JSCは、この段階になって、運営管理等をPFI方式にするなどと言い出しましたが、果たして入札に参加する企業はいるでしょうか。また、SPCスキームを用いた場合に、ノンリコースローンを出す金融機関があるのかも、注目です。
案件が進んでも、近年はPFIの破綻事例が目立ってきたので、そうならないか心配です。

独立行政法人日本スポーツ振興センター法や準用されている補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律とか独立行政法人通則法は、馴染みのない法律ですので、どうやって適法に資金調達をするのか、私も弁護士なのにあんまりピンときません。まあ、JSCがしっかり考えているから「手続」は大丈夫だとは思います。

これから文部科学省、財務省、JSCと東京都の協議が行われると思われますが、プロレスみたいなものでしょう。東京都も協議を開始すれば、0円じゃすみませんので、負担する前提になります。
最終的に東京都が500億円を出さなければ止まるのかもしれませんが、都議会も結局は政党の方針もあるから、前向きに検討する可能性が高いです(自民、公明で過半数を超えてます)。
この件は、槇文彦先生とか(東大の法学系教育棟も槇先生の作品です)、いろんなところから、批判が出ていましたが、もう止められないところにきたのだな、としみじみ感じました。


有識者会議の委員の方々は関係団体のトップのえらい人ばかりですが、真剣に事業性の判断もするのであれば、不動産開発事業者とか鉄道会社、ゼネコン、金融機関などのメンバーを入れた方がよかったと思うのは私だけでしょうか。
国際デザイン・コンクールのときも、ほとんどの人がザハはないだろう、って思っていたのに(デザイン自体は、人気トップでしたが、現実的にはないかなという意味です)、何故か審査委員全員一致で優勝しました。

その後、審査委員の内藤廣先生が、数年前までは、ザハの作品のことをあんまり好きじゃないと述べていたのに(「構造デザイン講義」216p参照)、新国立競技場は、ザハ生涯の傑作にするのが座敷にお客を呼んだ主人の責任だという趣旨のコメントをしており、全体として自分の本心を押し殺したような辛そうな発言をしています(日経アーキテクチャ2013年12月参照)。
審査委員としてはそう言わざるをえないのでしょう。
内藤廣先生は、そもそもザハの作品が好きじゃなかったのに、反対できなかったのはなぜでしょうか?圧力はなかったとわざわざコメントしているのですが、何があったのか気になります。

内藤廣先生は、選んだ以上、「結果について責任を負う」、と述べていましたが、責任を負うべきなのは内藤廣先生ではなく、JSCの担当者と文部科学省です。
その後も内藤廣先生も槇文彦先生ともシンポジウムで、率直に自分の意見を述べていますが、態度は立派でした。
http://world-architects.blogspot.jp/2014/10/nationalstadium-symposium.html

他方、解体工事の入札では、不正っぽい話があったり、なんだか気持ちの悪い流れでした。

弁護士としては当然ですが、「なんかやってるな」と感じます。
実際の設計を担当するのは、日建設計、日本設計、梓設計、アラップ(私の事務所の近所にある世界的に有名な構造エンジニアリング企業)、施工は、竹中工務店と大成建設、CMは山下PMCと建築技術研究所でいわばオールスターですから、資金さえあれば、なんとか完成させられるのではないでしょうか。

とにかく、ザハのデザインの工事は、施工が難しいですし、そもそもスタジアム建設は事故が多いので、職人さんの安全を祈るばかりです。
例えば、カタールのスタジアム工事ではかなり事故が起こっているとの報道もあります。
実施設計図書が全部できているのかもよくわからないし、5000本以上あると報道されている既存杭を抜いたのかも不明ですが(写真ではまだ抜いていなさそうです)、今年の10月着工というのは、厳しい感じがします。



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