2015/03/26

免震材料 ― 高減衰ゴム系積層ゴム支承の大臣認定不適合問題

東洋ゴム工業が自主申告したため、問題が話題になっていますが、おそらく免震材料だけでなく、他社の材料等や他の種類の材料等についても、問題があることが予想されます。

建築基準法第37条の規定による使用材料表(平成12年建設省告示第1446 号)で免震材料も国土交通大臣の認定が必要になり、同法第68条の26で指定性能評価機関(日本免震構造協会など)の性能評価を受けることになっています。
この性能評価が、結局、申請者の提出した書類のみによって、判断がなされるだけなのが問題ではと指摘されています。



すなわち実質的には添付された統計データ等と検討するだけで、性能評価がなされており、不正を発見できないという点が大きな問題だと指摘されています。建築業界にいる人からすれば、そもそもそういうものだという感覚です。

ただ、実験を指定性能評価機関がやり直すのは、コストや時間から考えても現実的ではないので、対案を考えるのはなかなか難しいと思いますが、国土交通省は何か対策を練ることが予想されます。たぶん、だいぶ手続が面倒になって、不正をしていない普通の業者は相当な迷惑を被ることになるでしょう。

しかも、今回は、東洋ゴム工業㈱は自主申告しており、内部調査で不正が判明したのであれば、自浄努力はなされているわけでして、まだましです。不正判明から申告までが遅すぎる感じがしますし、調査不足で後から更に問題が露見するのは段取りが悪いという印象です。

免震材料(積層ゴム)については、もとから「耐久性」や「残留変位」(地震で変位したまま元に戻らない)の問題が指摘されていましたが、メーカーは、問題をクリアーしていると説明してきましたし、マンションデベロッパーも購入者に対して、積極的に問題点を説明してきませんでした。

東洋ゴム工業㈱が不正な申請書を提出していた背景には、免震材料を巡る根本的な問題がある気がしますので、今後の展開に注意したいと思います。


例えば、東洋ゴム工業㈱は、多数の特許申請を出してますが、査定申立てを全然していないとか、何かしら違和感があります。
また、免震材料に関する民事的な責任についても、意外に難しい問題があります。

そもそも東洋ゴム工業㈱が免震材料を納入していたのは、施工会社で、施工会社は、発注者から工事を請け負っていることになります。
そうすると、発注者は、まず施工会社に瑕疵担保責任等をして、施工会社が東洋ゴム工業㈱に債務不履行責任(又は瑕疵担保責任)を追及することになります。

マンションの場合は、さらに面倒で、マンションの区分所有者か管理組合(共用部分)がマンションデベロッパーに瑕疵担保責任を追及して、そこからさらに施工会社という流れになります。

ここで、マンション側からは、飛び道具的に、直接、東洋ゴム工業㈱に対して、不法行為に基づく損害賠償請求(いわゆる別府マンション事件の判例を使う)をする方法もありますが、テクニック的には難易度が高いし、損害賠償を認めてもらっても、直さなければ仕方がないので、現実的ではない可能性があります(依頼があればやりますし、時効の問題がある場合にはこれを使う必要があるかもしれません)。
ただ、安全に関わることなので、施工会社も問題を放置することはできないので、積極的に対応しているようです。

東洋ゴム工業㈱の株式は暴落しており、代表訴訟の懸念がありますし、行政処分も気になります。
いずれにせよ制度上の欠陥があるので、おそらく他社、そして他の材料でも問題が見つかると予想されます。


参考条文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

建築基準法第37条
建築物の基礎、主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である政令で定める部分に使用する木材、鋼材、コンクリートその他の建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下この条において「指定建築材料」という。)は、次の各号の一に該当するものでなければならない。
一   その品質が、指定建築材料ごとに国土交通大臣の指定する日本工業規格又は日本農林規格に適合するもの
二   前号に掲げるもののほか、指定建築材料ごとに国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合するものであることについて国土交通大臣の認定を受けたもの
(構造方法等の認定)

第68条の26
構造方法等の認定(前三章の規定又はこれに基づく命令の規定で、建築物の構造上の基準その他の技術的基準に関するものに基づき国土交通大臣がする構造方法、建築材料又はプログラムに係る認定をいう。以下同じ。)の申請をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出して、これをしなければならない。

2  国土交通大臣は、構造方法等の認定のための審査に当たつては、審査に係る構造方法、建築材料又はプログラムの性能に関する評価(以下この条において単に「評価」という。)に基づきこれを行うものとする。

3  国土交通大臣は、第七十七条の五十六の規定の定めるところにより指定する者に、構造方法等の認定のための審査に必要な評価の全部又は一部を行わせることができる。

4  国土交通大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者が行う評価を行わないものとする。

5  国土交通大臣が第三項の規定による指定をした場合において、当該指定に係る構造方法等の認定の申請をしようとする者は、第七項の規定により申請する場合を除き、第三項の規定による指定を受けた者が作成した当該申請に係る構造方法、建築材料又はプログラムの性能に関する評価書(以下この条において「性能評価書」という。)を第一項の申請書に添えて、これをしなければならない。この場合において、国土交通大臣は、当該性能評価書に基づき構造方法等の認定のための審査を行うものとする。

6  国土交通大臣は、第七十七条の五十七の規定の定めるところにより承認する者に、構造方法等の認定のための審査に必要な評価(外国において事業を行う者の申請に基づき行うものに限る。)の全部又は一部を行わせることができる。

7  外国において事業を行う者は、前項の承認を受けた者が作成した性能評価書を第一項の申請書に添えて構造方法等の認定を申請することができる。この場合において、国土交通大臣は、当該性能評価書に基づき構造方法等の認定のための審査を行うものとする。

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