2014/04/04

表明保証


 表明保証とは “当事者が相手方に、一定の事項について、それが真実かつ正確であることを表明し、かつ、その表明した内容を保証するもの言われています。

 ただ、そもそも日本法にはそのような概念がなく、もともとは、英米の契約実務上使われてきた概念だと思われます。
 それを渉外系の弁護士が翻訳する過程で、日本法下でどういう法的意味を持つか、深く考えずに輸入してしまったのが、実際のところだと思います。
 M&Aの最終契約などに盛り込んだりして、使い始めると結構便利です。
 弁護士からすると、契約書の条文を増やすことができて、知識のないクライアントに頑張っていることをアピールできたのでしょう。

 輸入した契約条項・概念としては、口頭証拠排除条項とか完全合意条項、責任財産限定条項、倒産不申立条項など他にもありますが、意味・効力も解らず使用している場合がありますので、注意が必要です。


【注意点】

① 時点
 一般的に、英米法に詳しい人は、表明保証をする時点について、決算時点、契約時点とか決済時に特定することに拘る人が多いのですが、日本法の下では、この時点を変えること自体は自由だと思います。別に日本法では、そもそもそんな概念がないからです。特定の事項について、過去も将来のことも、あらゆる時点において、一般的に表明保証したとしても、民法90条等の問題は生じますが、本来は契約自由の原則があるはずです。

② 機能
 M&Aにおいては、デユーデリジェンスを補完したり、違約金条項と組み合わせることによって、リスクを分配する機能があります。デユーデリジェンスで確認できなかったことを、表明保証させ、表明保証違反があった場合には、違約金を支払ってもらうことで損害を填補できることになります。
 そうすると、なんでも表明保証させればデューデリジェンスなんていらない、と思う人もいますが、そう言われてみれば、そのとおりです。 ただ、相手方の資産がなかったりすれば、表明保証違反で損害賠償を請求しても、実効性がない場合もあるので、やはりその限度では必要性があります。

③ 効力
 近年、M&Aに関して、表明保証に関する裁判例が出るようになってきました。問題となるのは、買主側に悪意又は重過失があるような場合です。
 そのような場合に、買主を保護すべきか(表明保証違反のある売主に損害賠償請求できるか)という論点について、否定説と肯定説がありますが、悪意又は重過失の買主を保護しない、という否定説が比較的有力です。

 私としては、表明保証違反がありそうだけど、売主が表明保証するから取引を実行してくれ、と買主に頼んでいるようなケースもあるので、否定説は底が浅いなと思うのですが、いかがでしょうか。
 実際には、上記の議論を念頭において、違反しそうな表明保証条項については、表明保証させることでリスク分配等をするのではなく、独立にそれに対応する条項を設けておくのがプロの弁護士でしょう。

 他に表明保証は、ノンリコース・ローン、シンジケート・ローン、プロジェクトファイナンス、PFI、証券化など、あらゆる取引に使用されるようになっています。
内容も充実してきており、簡単にコピー&ペーストできるので、便利ですが、契約締結時から、表明保証条項に抵触・違反していて(除外し忘れて)、いきなり期限の利益を喪失するなどの事例が散見されます。

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