2014/04/09

ソーシャルメディアリスク対策


 近年、ソーシャルメディアの爆発的な普及に伴い、マーケティング等における有用性が強調される一方で、ソーシャルメディアを巡る問題も頻発しています。
 ソーシャルメディアに関する問題は「炎上」が代表的ですが、他にも「情報漏洩」なども重要な問題です。
 顧問会社向けに講演等をしていますが、今回はその内容を概説します。

対応策の概要
  対応策としては、①事前対策(予防)と、②事後対策に関するもの がセットで必要ですが、ネット上に流出した情報の拡散を止めることは事実上不可能です。
 また、被害も大きくなり、取り返しの付かない事態に発展することも稀ではないことからすれば、事前の対策の方が格段に重要性を有することに留意する必要があります。


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【 事 前 対 策 】

(1)  ソーシャルメディアポリシー策定
 法律上の定義はないが、会社の従業員及び役職員並びに業務に就く全てのスタッフ等が「個人」又は「業務」でソーシャルメディアを用いる際に注意すべき事項を定め、また、会社としての方針を示すものです。一般的には次の内容が盛り込まれることが多く、当該会社のWEBサイト上で公表するのが通常です。
 なお、会社の公式アカウントがある場合には、「公式アカウント(業務用)」のポリシーと従業員等の「個人のアカウント」のポリシーと分けて策定することをお薦めします。

  ①目的・背景情報➡発信のリスクが高くなってきた経緯など
  ②定義➡ソーシャルメディアの定義等 
  ③適用対象➡従業員のみならずアルバイト等も適用対象となること
  ④基本姿勢➡誠実な情報発信を心がけることなど
  ⑤法令・内部規定遵守➡個人情報保護法の遵守など
  ⑥企業秘密の保護➡企業秘密を外部に公表しないことなど
  ⑦相手・第三者を尊重・適切なコミュニケーションを心がけることなど  
 
(2)  ガイドライン、社内規定の整備(マニュアル)
 一般的にはソーシャルメディアポリシーが基本的な方針を定めたものであるのに対して、ガイドラインはもう少し具体的な規定を盛り込んだものになる。

〈 参考例 〉
①当社の従業員がソーシャルメディアを利用して情報を発信する場合は、
 当社の従業員としての自覚を持ち、法令や社内規定を遵守することを誓約する。
②ソーシャルメディアを利用して一度発信した情報については、ネット上に広がり、
 残存することを念頭において、できる限り正確な情報を発信することに務める。
③また、以下に挙げる情報については、原則として、
 その発信・公開することを禁止するものとする。
 ・第三者の著作権その他の知的財産権が含まれている情報
 (但し、著作権法適法な引用の場合は除外されるが
  判断が困難なため差し控えるのが望ましい)
 ・営業秘密に関する情報(顧客情報を含む)
 ・個人情報等
 ・差別的な発言を含む公序良俗に反する一切の情報

(3)  誓約書の提出
  従業員にガイドラインや社内規定を遵守すること、業務中の私的利用や報告義務、研修への参加、モニタリングへの同意、違反時の法的義務等について誓約させて、自覚を促すものです。

(4)  研修
 不適切投稿の原因が従業員等の自覚不足であることが多いため、研修は重要な予防策となりえます。
 特にソーシャルメディアポリシーやガイドライン等を閲覧しない従業員もいること が想定されるため、研修による教育が重要です。

研修の具体的内容としては、次の内容が挙げられます。
 ①ソーシャルメディアの定義
 ②メリット、デメリット
 ③ソーシャルメディアポリシーやガイドラインの確認
 ④法令や内部規定の確認
 ⑤トラブル発生時の対処方法
 ⑥理解度テスト

(5)  その他
 ソーシャルメディアの使用の事前規制は、個人の表現の自由や私生活上の自由を制約するので、一律禁止をすることは法的には困難です。
 そこで、従業員等には、単純に禁止という方法を取れないし、実際に24時間モニタリングすることも不可能ですから、研修や誓約書などで、ソーシャルメディアのリスクをしっかり自覚させることがやはり重要だといえます。


【 事 後 対 策 】

(1) モニタリング
 問題となる投稿等が拡散する前に、自社において早期に発見できれば直ちに是正するための対策を練ることが可能となります。
 モニタリングの方法としては
 ①目視、監視ツール・システム等(ソフトウェア)の利用
 ②外部機関に有償で委託する方法(ソーシャルメディア投稿監視サービス)
があります。
 具体的には、コストと対象等を勘案し、個別企業毎に適切なモニタリングを行う必要があります。

(2) アカウント停止・謝罪
  炎上事例に対しては、「鎮火」のために、早期に適切な謝罪が必要だと一般的に言われています。他方、アカウントを直ちに停止する事例も多いですが、これが逆効果という指摘もあります。
 炎上した途端にアカウントを削除してしまうと非難の矛先が失われる形となり、「そうはさせまい」とばかりに発信者を特定する動きや企業・学校などのトラブルの原因となった情報の関係者への追及につながり、炎上が急速に悪化することもあるのです。

(3) 再発防止
  具体的に発生した問題に応じて再発防止策を実行します。

(4) 投稿者への対応等
 ここまでくると弁護士への相談が必要だと思われます。
  ①雇用契約上の問題
   ・懲戒及び解雇等で対応
  ②刑事上の問題
   ・偽計業務妨害
   ・信用棄損
  ③民事上の問題
   ・業務停止中の損害
   ・失った信用の損害
   ・商品の回収費用等                        

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